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いばらき
防災キャンペーン2021
南飯田小学校区の防災訓練で簡易テントの組み立て方法を学ぶ地域住民=2020年10月4日、桜川市南飯田
自助・共助の再確認を
 東日本大震災は、大規模な自然災害から住民の命と生活を守るためには「自分たちの命は自分たちで守る」という教訓を教えてくれた。あれから10年、県内各地で自主防災組織が多く発足し、行政など「公助」の限界をカバーすべく、活動が進められている。

■自主防災組織 訓練重ね「地域力」向上 住民主導で計画作成
 「組織率よりも実効性を上げることが大事」
 自主防災組織の活動を指導し続けてきた桜川市の消防防災監、伊藤好さん(66)は声を強める。
 東日本大震災の発生当時、伊藤さんは筑西広域消防本部真壁消防署の署長だった。同市は震度6弱。三方を山に囲まれ、156カ所に上る土砂災害警戒区域がある同市だが、かろうじて大きな土砂災害はなかった。ただ、真壁地区の国の重要伝統的建造物群保存地区で歴史的建造物の9割が被災し、断水や停電など大きな影響があった。伊藤さんは、給水活動など市民生活を維持するために、陣頭指揮を執った。
 大震災の教訓から、同市は自主防災組織の育成、強化を目指し、2016年に伊藤さんを消防防災監として迎えた。伊藤さんは行政区ごとの自主防災組織の見直しや防災訓練の実施を推進。「トップダウンの計画でなく、地域住民から生まれた計画でないと効果を生まない」。地区防災計画を一から作り直させ、「住民主導」を重視した。
 自主防災組織の組織率も8割以上となり、指定緊急避難所(小中学校)単位の地区防災組織は、来年度中に全15地区で結成予定だ。
 県防災・危機管理課によると、本県の自主防災組織の数は、44市町村で計3409(20年4月1日現在)に上る。住民基本台帳の世帯数と組織されている地域の世帯数で計算した組織率は83.4%。
 組織率が100%の市町村は、44市町村のうち、水戸、日立、常陸太田、ひたちなか、鹿嶋、潮来、筑西、坂東、大洗、大子、美浦、阿見、河内、五霞、利根の15市町村となっている。

 人口減少、少子高齢化、地域コミュニティーの希薄化-。自主防災組織活性化の妨げとなる要因は多い。地域の実情に応じて、いつ発生するか分からない災害への備えが必要だ。桜川市は、自主防災組織の実効性を高め、「地域力」を向上させるため、自主性を重視して防災訓練を何度も重ねている。
 自治会の存続すら難しく、隣人の顔も分からない状況さえ生まれる現代。子どもから高齢者まで幅広い年代の住民が集まるよう、遊びや火おこし体験など多くの人が興味を持つようなイベントと組み合わせて防災訓練を実施する。訓練時、伊藤さんは「やらされている訓練はやっても意味がない。本当に何が必要か考えて」と厳しく指導もする。
 「地震大国の日本では必ず地震は起きる。危機感を持つことが大事。そして、自分ごととして捉えることが大事」。伊藤さんは住民に呼び掛け続ける。

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