東日本大震災の激しい揺れで棚から飛び出した食器類が壊れて散乱した室内=2011年3月、常陸太田市内
自分の命、自分で守る 自宅での被災軽減を
東日本大震災で県内は最大震度6強の揺れと津波に襲われ、人的被害は災害関連死を含む死者・行方不明者67人、負傷者714人。住宅被害は全半壊2万7691棟、一部損壊19万400棟に及んだ。屋内では棚が倒れたり、家電や食器が落ちて壊れるなど、多くの県民が数字に表われない被害にも遭った。まずは自宅での被災を軽減し、自らや家族の命を守ることが求められている。
「家具が倒れてそばにいる人を襲ったり、ガラスが割れてけがをしたりする可能性もある」。県防災・危機管理課課長補佐の池田孝法さん(46)は指摘する。家具や割れたガラスなどが避難経路をふさいでしまう恐れもあり、日頃からの備えが重要という。
対策は、背の高い家具をストッパー(突っ張り棒)で天井に固定する、テレビに耐震マットを敷くといった工夫がある。池田さんはさらに、食器棚を例に挙げ、棚の前倒し防止器具▽食器の滑り止め▽戸の開放を防ぐ止め金具▽ガラス飛散防止フィルム-の四重の対策ができるとした。また、下敷きになれば命に関わる重い家具については「配置を検討することもお勧め」という。
同震災での火災発生の原因の54%(津波浸水区域を除く)は電気関係とされ、火災予防の取り組みも肝心だ。揺れで転倒した電気ストーブ、落下した白熱灯、断線した電気コードなどの電気機器は、停電からの回復・通電に伴い出火原因になることがある。
避難時にブレーカーを落とせば通電火災を防げ、大地震に見舞われた中で確実に実行するには「感震ブレーカーが有効」(池田さん)。揺れに反応して自動的に電気を遮断する器具で「おもり玉式」「バネ式」の簡易タイプはホームセンターなどで数千円程度で購入できる。電気工事で対応する分電盤タイプもある。
地震に強い家づくりも重要だ。県内の全ての建物が新耐震基準を満たすと、最大級の地震の際、建物倒壊の死者数が約10分の1になるとの想定もある。
これら自助への備えは、2018年に県が見直した県内の地震被害想定に基づく県民向け資料「地震から自分や大切な人のいのち、くらしを守るために」にまとめられている。池田さんは公助の重要性に触れつつ「大きな災害になればなるほど、自助、共助が大切。できることから始めていただきたい」と話した。
東日本大震災で家具が倒れた民家内=2011年3月、鉾田市内
天井との間に設置された家具の転倒防止ストッパー