「福島の子ども保養プロジェクト」で笠間焼を体験する福島県の家族=昨年10月、笠間市内
いばらきコープ 福島の家族招いて交流
いばらきコープ生活協同組合(小美玉市、鶴長義二理事長)が取り組む「福島の子ども保養プロジェクトinいばらき」が今年で10年目を迎えた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故の影響を受けた子どもたちと家族を茨城県内に招待する事業で、12年から実施しているものだ。
プロジェクトの主な対象は、福島県中通り地区に住む家族。避難が困難で、外で遊べないなど放射能による制約がある生活から離れた場所と時間を少しでも提供しようと始まった。福島県生活協同組合連合会や福島大が立ち上げ、受け入れ団体は全国に広がった。県内の協同組合団体でつくる「協同組合ネットいばらき」で受け入れを決定。財源は組合員からの募金で、11~20年で6千万円超もの活動費が集まった。
隣県の本県は、長期休み以外の週末に気軽に来られる1泊2日のツアーで実施。いばらきコープではこれまでに27回開催。1回10家族程度を招待し、延べ人数として子ども390人、大人324人が参加した。
子どもが外で遊び、自然と触れ合う機会が不足していることや、健康被害や生活のストレスを抱えた保護者に寄り添うために企画してきた。
プランは職員の手作りだ。協力を得て、公園での外遊びや食に触れる収穫体験、笠間焼などの物づくりなどを県内各地で実施。中にはリピーターの家族もいるという。総合企画室の松尾掌室長(54)は「若手職員や組合員、協力してくれる方々が福島県の家族と接して、福島第1原発事故や減災について考えるきっかけをつくっていきたい」と力を込める。
昨年10月に鉾田市や笠間市などで実施したツアーで、子どもたちに釣りを教えるなどした鶴長理事長(64)は、原発事故について現在も「健康などへの不安という傷痕が残り続けている」と指摘し、「立ち直っていない人がまだまだいる。プロジェクトに参加し、前を向いてやっていけると思ってもらえるように寄り添っていく」と話した。