日頃の備えについて語り合う県防災士会の防災士、加瀬孝雄さん、山根実さん、寺門淳子さん(左から)=水戸市内
家庭の備え 県防災士会3人に聞く 日頃から自助意識を
■加瀬孝雄さん スマホ用にバッテリー
■山根実さん 衛生保つトイレ凝固剤
■寺門淳子さん 家族で年1回話し合い
東日本大震災のような大災害が起きたとき、電気、ガス、水道などライフラインの停止は避けられず、店舗からの食料や生活物資の調達は難しくなる。県や市町村は公的備蓄を進めているが、まずは各世帯での備えが必要だ。震災から10年の節目を前に、県防災士会の加瀬孝雄さん(70)、山根実さん(61)、寺門淳子さん(56)の防災士3人に、備蓄についてアドバイスしてもらった。
-備蓄の必要量や食料備蓄のポイントは。
寺門 東日本大震災では道路のダメージによる輸送への影響で、物資が届くのに3~5日かかった地域があり、熊本地震でも3日経過して届かない所がありました。やはり1週間分の備蓄は必要だと思います。
加瀬 そうですね。最低でも1週間分必要と考えてほしいです。南海トラフ巨大地震の被災地では、1週間ライフラインが止まる可能性が指摘されています。
山根 実際に、1人1日3リットルの水を1週間分ストックしています。冷凍食品は常に3日分保存し、消費しながら備えています。
寺門 缶詰など、普段から食べるものを少しだけ多めに蓄えるのが良いと思います。傷みやすいものを優先的に食べ、補充していけば賞味期限切れもなく、無駄がありません。
加瀬 計画的に消費していざというときに食べられるようにしておく「ローテーション」は大切ですね。
-お薦めの備蓄食料は。
寺門 肉じゃが、ハンバーグなど、レトルト食品は種類が豊富です。また、乾パンもおいしくなっており、保存が利くクロワッサンもあります。味わってみて、口に合うものを買い進めておけば、いざというときに抵抗なく食べられます。マグロやサバの(油漬け)缶詰も役に立ちます。だしが出るので、みそ汁や鍋にしてもおいしい。また果物の缶詰もお薦め。ストレスがかかる中、甘いもので一息入れられます。
加瀬 お湯や水を入れると食べられる状態になる「アルファ米」の種類も多くなりました。五目ご飯とかカレーとか。電子レンジで温めるご飯パックは、熱湯でも温めることができ、備蓄に向いています。
-食料以外に何が必要でしょう。
山根 トイレの凝固剤はとても重要です。災害時にトイレが使えないのは、非常にストレスになり、衛生上も深刻な問題になる。ウエットティッシュも衛生を保つのに必需品。手もテーブルも拭けるし、風呂に入れないときは体全体を拭けます。ヘルメットは、かさばらない折り畳み式も出ているので、余裕があればそろえましょう。
加瀬 消毒液やばんそうこう、常備薬。診療を受けるまでの応急処置ができるようにしたいですね。また、デマが広がる可能性がある中、正確な情報を入手するためのラジオが大切。手動やソーラー発電、乾電池を併用した災害時向けのタイプがあります。家族と連絡が取れないのはとても不安になるので、携帯電話・スマートフォンの充電器やモバイルバッテリーも欠かせません。
寺門 大震災では避難所でコンセントを争奪する状況もあったので(同バッテリーは)1人1台欲しいですね。自宅では懐中電灯を風呂場を含む各部屋と車の中に置いて、すぐ手に取れるようにしています。乳幼児がいる家庭では、普段から持ち歩いている「ママバッグ」が災害時に役立ちます。おむつやお尻拭き、授乳ケープなど、常に補充して、健康手帳や保険証(コピー)も入れてください。
-備蓄の意識向上について。
寺門 家族一人一人の防災バッグを作り、各自で必要と考えたものを入れて、なぜそれを必要と考えたのか話し合ってみるといいでしょう。被災時の連絡手段や集合場所の確認と合わせ、何を買いそろえるべきか、家族で相談する場を年1回でも設けてほしいです。
山根 備蓄食料のローテーションで時々食べることも、意識を醸成するきっかけになりますね。例えば、乾パンを食べたことがない子どもは多く、慣れさせることにもつながります。
加瀬 スイスでは国民に50日間の備蓄を義務付け、子どもの頃から指導しています。また、アメリカやイギリスでも25日間の備蓄を推奨しています。日本でも実は、災害対策基本法で備蓄は住民の努力義務。一人一人が日頃から自助を意識してもらいたいです。